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社長の人柄を磨くために九思あり

商売がうまくいっているケースを見ると、結局は社長の人柄がものをいうのだろうと考えさせられることが多々あります。「100万分の1グラム」という世界最小の歯車を生み出して、一躍脚光を浴びた樹研工業の松浦元男社長は、地元の暴走族などを社員として受け入れてきたことでも知られています。創業以来、人の採用は先着順。学歴も国籍も性別も問わず、履歴書も見なければ面接も試験もなし。「誰もが無限の可能性を秘めた存在」が松浦社長のモットーで、その背景には「人は本来“善い生き物”」という前向きな姿勢で人を信用しようとする気持ちがあるようです。

成果主義や合理主義とは正反対の松浦流経営手法を、「そんな精神論は聞き飽きた」と思う方もいるかもしれません。松浦社長自身も最初は「こいつらで大丈夫か?」と疑心暗鬼だったそうです。しかし、入社したばかりの社員には工場で徹底的に基本を叩き込み、世界に通用する技術者に育て上げる仕組みを整え、何年もかけて人材を育成した結果が「世界最小の歯車」につながりました。前向きな姿勢で人を信じる気持ちがあれば社員は期待以上の成果を出す。この信念は、そのまま松浦社長の人柄に通じているといえるでしょう。

リーダー(君子)の資質について多くの言葉を残している孔子は、『論語』の中で「君子に九思あり」と説いています。孔子自身が立派なリーダーでありながらも、常にこの「九思」をもって自らを磨いていたのです。

1.物事の本質を明確に見ること 2.人の話はちゃんと聞くこと 3.穏やかな表情を保つこと 4.謙虚にふるまうこと 5.言行一致で誠実に話すこと 6.仕事は慎重かつ尊敬の念を持って行うこと 7.疑問があったら質問すること 8.怒るときはしこりが残らぬようにすること 9.うまい話にはのらぬこと

社長の人柄は多かれ少なかれ商売に影響を与えるようです。だとすれば、九思の実践は容易ではありませんが、自分を成長させる糧として、ひいては商売を成功させる策のひとつとして先人の教えを心に刻んでおきたいものです。

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